保育の5領域・3の柱・10の姿について徹底解説

全ての子どもに質の高い教育と保育を提供することを目的として、2015年に子ども・子育て支援新制度が施行されました。それに伴い、以前は養護を行う場所として認識されていた保育園が新たな教育機関として位置付けられ、2018年に10年ぶりに大幅改定された保育所保育指針においても、保育園での幼児教育の必要性が明確化されるようになりました。

今回は、指針改定後の保育を実践する上で必要な、「保育の5領域」「3つの柱」「10の姿」について、それぞれの内容や位置付けなどについてわかりやすく解説します。

保育の5領域とは

保育所保育指針にて定められている5領域とは、子どもの資質や能力を成長させるための「ねらい」を5つの領域に分けたものです。5つの領域は以下のように分類されています。

健康

「健康」は、心身の健康に関する領域です。明るく元気に心身の健康を育むことや、安全な生活を子ども自らが作り出すことのできる力を養うことを目的としています。

人間関係

「人間関係」は、人との関わりに関する領域です。周囲との関わりや良好なコミュニケーションを通して、社会生活を送るために欠かせない協調性や自立心を養うことを目的としています。

環境

「環境」は、身近な環境との関わりに関する領域です。好奇心や探求心を持って身の回りの環境に関わり、物の性質や仕組みを生活に取り入れたり、様々なものに触れたりしながら感性を養うことを目的としています。

言葉

「言葉」は、言葉の獲得に関する領域です。自分の経験・想いを言葉で表現する力や、相手の話を聞く力を育て、言葉でのやり取りや表現力を養うことを目的としています。

表現

「表現」は、感性と表現に関する領域です。言葉をはじめ、絵や音楽を通して自分が感じたことを表現することで、豊かな感性と表現力を養うことを目的としています。

3つの柱とは

3つの柱は、「保育の5領域」や「10の姿」の基礎となるものであり、保育所保育指針で示されている「育みたい能力・資質」を指しています。子どもたちが生きていく上で生涯必要となる重要な柱であり、保育園・幼稚園・認定こども園・小学校が垣根を越え連携して育むものとして位置付けられています。

知識及び技能の基礎

豊かな体験を通して、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする

思考力、判断力、表現力等の基礎

気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする

学びに向かう力、人間性等

心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする

10の姿とは

10の姿とは、正式には「幼児期の終わりまでに育ってほしい『10の姿』」と言い、小学校へ入学する子どもの成長を支えるために策定されたものです。保育園・幼稚園・認定こども園においての幼児教育の共通指針であり、従来の5領域の考え方をもとにしながら更に細分化し、小学校就学に備えて、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を10の項目に分けて示しています。

健康な心と身体

<内容>

園生活の中で、充実感と満足感を持って自分のやりたいことに向かって、心と体を十分に働かせながら取り組み、見通しを持って自ら健康で安全な生活を作り出して行けるようになる。

<具体例>

  • 喜んで体を動かすことで、充実感や満足感を持てるようになる
  • 体を使って活動をする中で、目標をもったり、自分なりに行動できたりするようになる
  • 遊びや生活を通して、危険に気付き、状況に応じて安全な行動が取れるようになる
  • 衣服の着脱や食事、排泄などの生活に必要な活動が分かるようになり、自主的に取り組む

自立心

<内容>

 身近な環境に主体的に関わり様々な活動を楽しむ中で、しなければならないことを自覚し、自分の力で行うために考えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成感を味わい、自信を持って行動するようになる

<具体例>

  • 遊びや生活の中で、自分の力でできることを考え、自分でしなければならないことを自覚して行動する
  • 自分から遊びを生み出し、難しいことでも自分なりに工夫するなどして諦めずにやり抜く

協同性

<内容>

 友だちと関わる中で、互いの思いや考えなどを共有し、共通の目的に向けて、考えたり、工夫したり、協力したりし、充実感を持ってやり遂げるようになる

<具体例>

  • 友だちと積極的に関わり、様々な出来事を共有しながら、友だちの異なる思いや考えに気付けるようになる
  • 友だちとの関わりの中で、相手に分かるように伝えたり、相手の気持ちを理解したりしながら、より分かり合えるようになる
  • みんなで目的を共有し、それに向かって話し合ったり、考えを一つにまとめたりしながら、協力する楽しさや共に作り上げる喜びを知る

道徳性・規範意識の芽生え

<内容>

 友だちと様々な体験を重ねる中で、してよいことや悪いことが分かり、自分の行動を振り返ったり、友だちの気持ちに共感したり、相手の立場に立って行動するようになる。

 また、決まりを守る必要性が分かり、自分の気持ちを調整し、友だちと折り合いを付けながら、きまりを作ったり、守ったりするようになる

<具体例>

  • してよいことや悪いことが分かり、適切な行動を意識しながら過ごせるようになる
  • 楽しく遊ぶためには決まりがあるということが分かり、ルールを守ったり、必要に応じて作り変えたりするなど工夫するようになる。
  • 相手の気持ちに共感し、相手を大切に思いながら行動するようになる

社会生活との関わり

<内容>

家族を大切にしようとする気持ちを持つとともに、地域の身近な人と触れ合う中で、人との様々な関わり方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じたり、地域に親しみを持てるようになる。

また、園内外の様々な環境に関わる中で、遊びや生活に必要な情報を取り入れ、情報に基づき判断したり、情報を伝え合ったり、活用したりするなど、情報を役立てながら活動するようになるとともに、公共の施設を大切に利用するなど、社会とのつながりなどを意識するようになる。 

<具体例>

  • 両親や祖父母など、家族から愛されていることに気付き、家族を大切にしようとする気持ちを持つようになる
  • 地域の人との触れ合いの中で、親しみを持って接し、地域の一員として役に立てる喜びを感じられるようになる
  • 公共施設を利用する中で、みんなのものであることに気付き、大切に利用する

思考力の芽生え

<内容>

 身近な事象に積極的に関わる中で、物の性質や仕組みなどを感じ取ったり、気付いたり、考えたり、予測したり、工夫したりするなど、多様な関わりを楽しむようになる。

<具体例>

  • 様々な環境に関わることで、深い興味を抱き、不思議に思ったことなどを調べたり探求したりするようになる
  • 身近な物や道具の性質や仕組みに気付いたり、楽しみながら生活に活かしたりする

自然との関わり・生命尊重

<内容>

 自然に触れて感動する体験を通して、好奇心や探求心を持って言葉で表しながら、自然への愛情や畏敬の念を持つようになる

<具体例>

  • 自然事象を遊びに取り入れたり、様々な方法を用いて自然の不思議さを確かめたりするなど、身近な自然への関心が高まる
  • 生き物の世話を通して、生命の不思議さや命の尊さに気付き、大切に関わろうとする

数量・図形、文字等への関心・感覚

<内容>

 遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気付いたりし、これらを活用して興味や関心、感覚を持つようになる。

<具体例>

  • 読んだり、書いたり、数えたりすることによって、文字や数字などへの関心や感覚が高まる
  • 図形や標識などが生活と密接に関わっていることを知り、関心が高まる

言葉による伝え合い

<内容>

 保育士や友だちと心を通わせる中で、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付け、言葉による伝え合いを楽しむようになる

<具体例>

  • 絵本や物語に親しみ、言葉の持つ音の美しさや意味の面白さなどに気付く
  • 言葉を通して保育士や友だちと心を通わせる
  • イメージしたことを言葉で表現し、友だちと共有することを楽しむようになる

豊かな感性と表現

<内容>

 心を動かす出来事等に触れ、感性を働かせる中で、様々な素材の特徴や表現の仕方などに気づき、感じたことや考えたことを自分で表現したり、友だち同士で表現する過程を楽しんだりし、表現する喜びを味わい、意欲を持つようになる。

<具体例>

  • 美しいものを見たり心を動かされる出来事に触れたりする経験を通し、感じたり考えたりする
  • 遊びや生活の中で感じたり考えたりしたことを、楽しみながら描いたり作ったりして自由に表現するようになる

10の姿の考え方

あくまで「目安」として考える

ここまで紹介した10の姿は、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」と示されていますが、必ず達成しなければならないものではありません。

子どもにはそれぞれに個性や発達差があり、成長のスピードは個々によって全く違います。

無理に10の姿に当てはめず、あくまで成長の目安や指標の一つとして捉えましょう。

3つの柱、5領域への理解を深める

「3つの柱」は、5領域や10の姿の基準となっているものであり、3つの柱を育むための具体策が「5領域」、その5領域を更に細分化したものが「10の姿」です。これら全てが関係しあって、今日の指標となっています。10の姿だけに注目するのではなく、そのもととなる3つの柱、5領域への理解を深めながら、子ども自身の発達に沿った内容の指導計画を考えましょう。

まとめ

今回は、保育の5領域、3つの柱、10の姿について、それぞれの内容や位置付けを解説しました。保育所保育指針の改定により、新しい考え方が多く取り入れられた昨今の保育の現場ですが、何よりも大切なのは、目の前の子どものありのままを捉え、その子どもにとって最善の利益を追求することです。もし、計画を立てる中で悩んでしまった場合には、自分の思いがその子ども自身のためになっているのか、指針に照らし合わせながら考えてみてくださいね。

-保育士のコラム