縦割り保育・異年齢保育って何?〜メリットデメリットなどを徹底解説〜

近年、異なる年齢の子どもたちが、クラスの垣根を超えて一緒にグループを組み活動をする、縦割り保育を取り入れる園が増えてきました。名前は聞くけれど、実際どのように取り入れているのか、気になる方もいるのではないでしょうか。この記事では、縦割り保育の位置付けやねらい、メリットデメリット、縦割り保育に適した保育のアイデアなどについてそれぞれ解説します。これから縦割り保育を導入しようと考えている方はぜひ参考にしてみてください。

縦割り保育・異年齢保育とは

縦割り保育とは、異なる年齢の子どもたちが、同じ空間で活動や生活を一緒に行なう保育方法であり、異年齢保育や混合保育と呼ばれることもあります。通常のクラス別保育では、同年齢の子どもたちが同じクラスに振り分けられ、ある程度同じような成長段階のもと保育を受けますが、縦割り保育では、クラスの枠を超え、様々な年齢の子どもたちが共に過ごすため、通常の保育とは違った配慮や関わりが必要になります。

縦割り保育・異年齢保育のねらい

昨今、少子高齢化や核家族化、共働き世帯の増加などの社会情勢の影響により、隣人や地域の人々との関係性が希薄になると同時に、年齢の異なる子ども同士の関わりも減少してきています。しかし、社会生活においては、年齢や性別に関係なく様々な人々との関わりは避けては通れません。また、そういった社会性や協調性は大人になってから急に育つものではなく、幼少期からの経験が鍵になります。そのため、園生活において、異なる年齢の子どもたちと関わる機会をあえて設定し、幼少期から様々な価値観に触れ、お互いを思い合い、受容し合える力や協調性を育むことをねらいとして縦割り保育の力が注目されています。

縦割り保育・異年齢保育の形式

一言に縦割り保育と言っても、導入の形は園によって様々であり、その形式の例は以下の通りです。

  • 週のうち数日のみ縦割り保育を導入
  • 行事やイベントなどの際に縦割り保育を導入
  • 食事やおやつ、お昼寝など、1日のうちの一定時間で縦割り保育を導入
  • 延長保育や土曜日のみ縦割り保育を導入
  • そもそもクラスを作らず、完全な縦割り保育として運営

参加の対象年齢も、全年齢を対象とする園もあれば、0〜2歳児は実施せず、3〜5歳児のみを対象としている園など、園によって導入方法は違います。

縦割り・異年齢保育のメリット

学びの幅が増える

様々な年齢の子どもが一緒に生活をする縦割り保育では、年上の子どもは、年下のお手本であろうとし、面倒を見なければいけないという責任感が生まれ、自信や自尊心が育ちます。
一方年下の子どもは、何でもできる年上の子どもに憧れの気持ちを抱き、良いところを見習おうとします。また、自分が優しくしてもらったのと同じように、自分より小さな子どもに対して優しくしようと努めます。大人が一つひとつ教えなくても、子ども同士の関わりを通して、社会で生きるために必要な能力を自然と学ぶことができるのです。

友だちの輪が広がる

クラス別保育では、どうしても同じクラスの子どもと過ごす時間が多くなり、友だちは同年齢の子どもに偏ります。同学年の限られた人数のクラスの中だけでは、気の合う友だちを見つけられない子どもも出てくる場合がありますが、縦割りならば、クラスの枠を超えた友だちを作ることができます。関わる子どもの人数が多い分、自分と同じ興味を持った他学年の子どもに出会うことができ、友だちの輪が広がっていきます。

遊びの幅が広がる

通常、それぞれの保育室には、その年齢に適した玩具や遊具が設定されていますが、子どもによって発達の速度は違い、必ずしも自分のクラスの玩具がその子どもに合っているとは限りません。異年齢の関わりであれば、自分で自分に合った玩具を見つけることができます。また、多様な遊びの中で、新たな興味関心に出会うことができるのもメリットの一つです。

成長をより感じられるようになる

縦割り保育を行なっている園では、「年上の子たちと過ごすようになってから、自分の身支度を進んでするようになった」「最近妹に優しくなった」など、保護者から喜びの声があがる傾向があります。異年齢の子どもとの関わりを通して学ぶことは多く、その成長は家庭生活にも大きな影響があるようです。子どもの成長を日ごとに感じられるのは、保護者にとって何よりの喜びですよね。

保育士の成長の場にもなる

3〜5歳児の幼児クラスの担当になると、必要な職員配置数も変わり、基本的には一人でクラス運営をすることになります。経験の浅い保育士にとっては負担も大きく、保育をする上で孤独や不安を抱えてしまうことも。そこで、縦割り保育のクラス編成にすることで、各学年の保育士が複数で保育を行なえるため、多様な保育を見ることができ、若手保育士の成長にもつながります。

縦割り保育・異年齢保育のデメリット

活動が合わない可能性がある

子どもの年齢や発達速度によってできることが異なるため、活動内容によっては、高度に感じる、または退屈に感じるなどの可能性が出てきます。年齢ごとに活動を分けたり、同じ活動をする場合は難易度を調整するなどの配慮が必要です。

ストレスを感じる可能性がある

年下の子どもの中には、体の大きい年上の子どもとの関わりや、大人数での関わりを不安に感じる子どもがいます。逆に、年上の子どもは、「しっかりしなくては」「年上だから我慢をしなくては」と様々な場面でプレッシャーを感じる可能性があり、そういった場面が多くなれば、お互いに異年齢の関わりを負担に感じるようになってしまいます。適宜コーナーや活動を分けたり、一人で落ち着いて遊べる空間や、保育士にゆっくり甘えられる時間を用意したりするなどして、それぞれが無理なく集団に馴染めるような環境作りを心がけましょう。

年長児への配慮が必要

年長児は、小学校入学に向けて様々な準備を必要とするため、縦割り保育にばかり重きを置いてしまうと、就学準備がおろそかになってしまう可能性があります。そのため5歳児は、年間を通して計画的にクラス別保育を行ない、5歳児ならではの活動を経験させる必要があります。

安全確保

体格差や体力差、玩具や遊具の形状、活動の難易度など、異年齢ならではの要素により、通常よりも更に怪我防止策や安全管理が必要になります。様々なリスクを想定し、事故や怪我、トラブルなどが起きないようマニュアル化して、保育園全体でフォローができる体制を整えましょう。

保護者対応

上記の様々な理由から、縦割り保育を不安視する保護者もいます。縦割り保育の効果や、考えられるデメリットへの対応方法など、保護者会などを通じてしっかりと説明し、理解してもらわなければなりません。

縦割り保育・異年齢保育に適した保育のアイデア

お店屋さんごっこ

  • 年上の子どもがお店屋さんとなり、年下の子どもが買いに来る
  • ブースや商品、売り物を入れるバッグなどを子どもたちのアイデアをもとに製作
  • 季節によって、お祭りの屋台などにしても楽しめる

大型作品製作

  • テーマを決め、全年齢で大きな模造紙などに一つの作品を作る
  • 年齢ごとに無理なく参加できるよう、はさみを使う、絵の具で塗る、手形スタンプを押す

 など技法を分ける

  • 全員で協力して作る、という行為によって協調性が育まれる

お散歩

  • 年上と年下をペアにして散歩をする
  • 一緒に手をつないで歩き、歩幅を合わせたり、散歩をしながら見る風景などの発見に共感し合うことで、お互いへの理解が深まり、交流を楽しめるようになる

まとめ

縦割り保育・異年齢保育のねらいや、それぞれのメリットデメリット、縦割り保育・異年齢保育に適した保育のアイデアについて解説しました。発達面や安全面など、配慮すべき点はありますが、その分メリットも多く、子どもの成長につながります。これを機会に縦割り保育への理解を深め、豊かな経験を通して、子どもたちの健やかな成長を後押ししたいですね。

-保育士のコラム