子どもと一緒に過ごす保育士の仕事はとてもハードです。辞めたいと感じる人も少なくないでしょう。今回は、20代、30代、40代の世代別に「保育士を辞めたい」理由を追っていきます。一般的には職場の人間関係や年収の少なさから転職を決める人が多いですが、どんな理由で保育士をやめるケースが多いのでしょうか。
20代保育士の辞めたい理由
養成学校を卒業したばかりの新人保育士や、すでに数年の勤務経験がある保育士の多い20代。どんな理由で辞めたいと思う人が多いのでしょうか。
理想と現実のギャップが埋められない
保育士になって数日または数ヶ月は、保育士の仕事の忙しさに圧倒されてしまうでしょう。「保育士になったら◯◯がしたい!」と、理想を描いていた人ほど、現実を知って失望してしまうかもしれません。
仕事や人間関係がしんどい
今のままでも業務が多いのに、一方でどんどんと責任のある仕事を任されていく……そんな状況にしんどさを感じてしまう保育士は少なくありません。ベテランの先輩に相談したくても、20代という年齢から遠慮してしまい、1人で悩みを抱えてしまうことがあります。
このような状況から仕事も人間関係もつらくなり、保育士を辞めたいと思うようになるのです。
理想のキャリアを形成するため
将来結婚や出産を考えている保育士の場合は、20代のうちに一定の経験やキャリアを築いておきたいと考える人が少なくありません。
「20代の終わりまでに主任保育士を目指したい」という人もいます。結婚出産を終えた後の復職時に役立つキャリアを、20代のうちに経験しておきたいと考えるからです。
また、保育士によっては、20代までに積んでおきたい経験がそれぞれ違います。「0歳児から5歳児までのすべての年代の担任をこなしたい」「音楽を使った保育を経験したい」「農業体験を取り入れたい」と、個々の理想があるでしょう。
これらのキャリア形成ができない職場では働けないと考えても無理はありません。
将来性が感じられない
働いても年収が上がらない、キャリアアップが難しい、仕事からの学びがないなど、このまま働いても将来性がないと思ったときに、保育士を辞めたいと考えます。
自分自身で成長を感じ、その成長を評価されてこそ、保育士として働き続けられるのでしょう。
結婚や出産等のライフステージの変化
他の世代にも当てはまりますが、20代の保育士も、結婚や出産などのライフステージの変化によって退職するケースがあります。普段から人間関係で悩んでいた、労働条件に不満があった等の場合には、産休育休を取得せず、妊娠を機に退職を選ぶ人も多いです。
30代保育士の辞めたい理由
30代は一般企業であれば課長などの中間管理職に就く世代です。保育士も、20代から働き始めている保育士なら勤続年数は10年を超え、ベテランと呼ばれます。そんな30代の保育士が辞めたくなる理由は、以下のような理由があります。
給与が上らない
保育士は他の職業と比べても年収が安いことで知られています。厚生労働省が提供するデータ(https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/var/rev0/0119/7609/ho3.pdf)によると、によると、保育士の平均年収は約223万円で、全職種平均と比較した場合110万円ほど差があります。なかでも女性の保育士はさらに年収が下がり、平均年収は約221万円です。
「働いても働いても、年収が上がらない」という保育士の声は少なくありません。最近では政府や自治体が保育士の処遇改善に動いていますが、抜本的な低年収の改善には至っていないのが実情です。
家庭環境・ライフステージの変化
30代は結婚や離婚、出産や育児等、ライフステージが目まぐるしく変わる世代です。
配偶者が転勤となり、その影響で退職したり、家庭環境からフルタイムで働くことが難しくなり、体調を崩してしまうケースもあるようです。
家庭環境やライフステージの変化があっても、働き方を柔軟に変更できる保育所であれば働き続けることができるでしょう。しかし、保育所によっては時短勤務やクラス担任から外れるなどの調整をしてもらえず、やむを得ず退職になるケースもあります。
他の職種への興味
しばらく保育業界で働いたものの、年収が上がらない、働きにくい等の理由から、他の職種へ興味を持つ保育士は少なく有りません。学童や子育てひろばのスタッフ等、保育士資格を生かして働く場合もあれば、全く別の異業種への転職をする保育士も多いです。
人のお世話をするのが好きなら介護職、人と接するのが好きなら販売や営業、資料作成が得意なら事務職と、保育士の経験を生かしてはたらける職種は多くあります。
また、保育士を保育園へ紹介するエージェント等で保育士をサポートする側になって働く保育士も少なくありません。
40代保育士の辞めたい理由
40代は、20代や30代と比べると大ベテランといえるかもしれません。産休育休を終え、子育てをしながら働く保育士も多い世代です。そんな40代が辞めてしまうのには以下のような理由があります。
同世代がみんな辞めてしまった
40代という年齢は、ライフステージの変化も個々で違います。自身が出産する人もいれば、親の介護が始まる人もいて、家庭の事情を抱えて辞めてしまう保育士も少なくありません。
すると、職場の40代が自分だけ……という状況に陥ります。若い世代の保育士に小言を漏らすわけにいかず、園長に愚痴を言うわけにもいきません。むしろ若い世代と園長らとの板挟みにあったり、疎外感を感じたりと、働き続けるのが辛くなり、保育士を辞めてしまいます。
家族のために時間を使いたい
これまでずっと働き続けてきた人でも、ふと、これまで以上に家族のために時間を使いたいと思う人は少なくありません。これまで保育士として邁進してきた人生を振り返り、これからは家族との時間を大切にしたいと考えるのです。
子どもが学業に専念できるようにサポートしたい、パートナーの転職を機に移住したい等、家族を中心に考え始める人も多く存在します。
正職員の保育士の場合は労働時間も長くなりがちです。そのような状況を変えるために、パートで働ける保育園へと転職するケースも少なくありません。
保育士の労働環境が変われば、保育士は辞めずに済む?
保育士はライフステージの変化や家族の状況と、労働環境とのミスマッチで退職するケースが多いです。自分が快適だと思う時間帯に働けたり、体調の悪いときには気軽に休めたりする仕組みがあれば、退職せずに済む可能性を感じます。また、「先輩に相談できない」といった人間関係の理由で辞める人が多いのも印象的です。家庭と職場、部下と上司など、保育士はいつも何かと何かの間で孤独さを感じているのかもしれません。責任の重さに見合わない薄給も、保育士が「辞めたい」と思う理由に拍車をかけています。
今、保育士を辞めたいと思っているなら、なにが改善されれば働き続けられるのか、一度自分自身で顧みてみると、今後の働き方に活かせるでしょう。